人間の指先は非常に繊細な動きができる一方で、視覚の解像度には限界があるため、微細な作業では拡大鏡などが必要になります。 PC 画面上での作業においては作業領域を拡大表示することで微細な作業を支援するのが一般的です。しかしこの場合、全体像が把握できなくなったり、拡大部分と通常視野の間に歪みが生じたりする問題がありました。
そこで本研究では、対象物を拡大する代わりに、画面の周辺部分(周辺視野領域)に手の動きを拡大して表示する方法を提案しています。周辺視野は空間解像度は低いものの、動きの検出に優れているため、微細な動きを認識しやすくなり、微細作業の支援に有効であると考えられます。
実験では液晶ペンタブレットを使い、画面周辺に指先の動きと連動したノイズパターンを表示し、被験者の操作への影響を調べました。スタイラス操作やマウスカーソルが見えている状態ではほとんど影響が見られませんでしたが、マウスカーソルを非表示にした状態では明確な効果が確認されました。特に横線や縦線を描く際に、周辺視野への動き提示が操作精度の向上に寄与することが分かりました。
この手法は、ハンダ付けや精密な描画作業など、目視では確認できないほど細かい指先の動きを必要とする作業の精度向上に応用できる可能性があります。
受賞
- 第152回HCI研究会 学生奨励賞
