両眼視野闘争を応用した潜像技術および難視化技術

立体映像を用いた舞台やイベントでは、観客が専用の眼鏡をかけることで、通常とは異なる映像体験を共有できます。一方で、眼鏡をかけるタイミングや外すタイミングは、アナウンスや字幕によって指示されることが多く、観客の主体的な没入を促す演出としては十分に活用されていませんでした。

本研究では、左右の眼に異なる刺激が与えられたときに見え方が変化する「両眼視野闘争」という視知覚現象を応用し、潜像技術と難視化技術を開発しました。これらは、裸眼では見えない映像が眼鏡をかけると知覚される、あるいは眼鏡をかけると映像が見えにくくなるという演出を実現するものです。それにより、立体視用眼鏡の着脱そのものを、観客が映像に能動的に関わるためのインタラクションとして利用することを目指しました。

本技術により、立体映像を見るために眼鏡をかける行為や、映像提示の終了にあわせて眼鏡を外す行為そのものに、演劇的な意味を持たせることができます。観客は、眼鏡をかけた瞬間に隠された映像を見つけることで、舞台上の出来事に自分から関わっている感覚を得られます。また、難視化によって映像が見えにくくなったときには、眼鏡を外すことで演劇空間から日常へ戻るきっかけを得られます。これにより、舞台演出や謎解きイベント、アトラクションなどへの応用が期待できます。

潜像技術の例。左は裸眼で見る表示映像、中央は左眼用映像、右は右眼用映像。眼鏡をかけると、潜像として埋め込まれた「Fukuchi Lab」の文字が知覚される。

潜像技術の例。左は裸眼で見る表示映像、中央は左眼用映像、右は右眼用映像。眼鏡をかけると、潜像として埋め込まれた「Fukuchi Lab」の文字が知覚される。

潜像技術では、立体視用眼鏡をかけると左右の眼に異なる映像が届くため、両眼視野闘争によって潜像部分が強調され、裸眼では見えなかった画像や文字が浮かび上がって知覚されます。

難視化技術の例。左は原画像、右は左右の眼用に分けて難視化した表示映像。裸眼では原画像として見えるが、眼鏡をかけると読み取りにくくなる。

難視化技術の例。左は原画像、右は左右の眼用に分けて難視化した表示映像。裸眼では原画像として見えるが、眼鏡をかけると読み取りにくくなる。

難視化技術では、眼鏡をかけると左右の眼に画像の断片が別々に届くため両眼の像が融合せず、両眼視野闘争によって見え方が不安定になり、元の画像や文字を把握しにくくなります。

発表文献

  1. デモ: “立体視野闘争を利用した潜像技術および難視化技術とそのインタラクション手法” 福地 健太郎, 高橋 岳士, 松沼 毅, インタラクション2016論文集. LINK (2016)

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