流体シミュレーションによる疑似浮力知覚の生成

錯覚を利用して触力覚フィードバックを疑似的に知覚させる手法である pseudo-haptics(疑似力覚)の実装では、ユーザの身体及び力の作用する物体全ての挙動を実時間で求める必要があります。多くの研究では、その力の作用する物体は固体を対象して調査されているため、ゲームエンジン等に搭載されている基本的な物理シミュレーションエンジンによっても十分な演算が実用的な範囲で可能です。一方、力が作用するものを流体とした場合には複雑なシミューレションが必要となるため、実時間演算に適した手法を慎重に選ばなければなりません。

そこで、本研究では 3DCG を用いた仮想空間内にて、液体に浮かぶ固体に触れた際に感じる浮力を pseudo-haptics によって提示する手法の開発を進めています。Pseudo-haptics の生起では提示する視覚情報の現実感が重要であるため、本研究では液体と剛体との連成シミュレーションを用い、ユーザの個体への接触に対する固体および液体の挙動を精密にシミュレーションすることを試みました。またその際に、固体にかかる浮力に応じて仮想空間内に表示されたユーザの手(バーチャルハンド)の位置を変位させることで pseudo-hapticsを生起させました。

簡易的な実験の結果より、流体の挙動を高精度に計算し可視化を行うだけでも被験者に浮力を感じさせることが可能であることが示唆されました。また、バーチャルハンドの変位量を調節することでさらなる pseudo-haptics を提示できる可能性も示唆されました。

発表文献

  1. 口頭発表: “流体と剛体の連成シミュレーションを利用した視覚情報提示による浮力の疑似触知覚の生起” 深谷 陸, 福地 健太郎, 第27回日本バーチャルリアリティ学会論文集, pp. 1F4-2. LINK (2022)

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