自己帰属感の生起は、主に視覚と体性感覚の一致性、そして視覚と運動指令からの予測の一致性の認知によって引き起こされることが明らかになっています。しかし、能動的運動時にどちらの認知が主要な役割を果たすのかは明らかではありませんでした。
本研究では、予測との一致性を保ちつつ、視覚と体性感覚との間に不一致をもたらすことで、体性感覚と予測とを分離した検証を行いました。被験者には複数の映像から自己の動きに同期する映像を見つけるタスクを課し、手の動きを様々な角度で回転させた映像を呈示することで不一致条件を作り出しました。その結果、能動的運動時の自己帰属感の生起過程では視覚と予測の一致性が優位に働くことが示されました。
これらの知見は、主にVR上でのユーザインタフェースを設計する際に身体運動の予測のしやすさを考慮に入れた設計を検討することの重要性を示しています。

また、Pseudo-haptics として知られる擬似的な外力覚は、これまで視覚情報と力覚情報との不一致によって生じると説明されてきましたが、変容された力覚情報は外力としても随意運動の結果としても解釈可能です。
本研究では、自己の運動予測と視覚的に知覚された運動結果との差を認知することが、疑似的な外力が生じる要因であるという仮説を立てました。被験者の運動に運動伝染を引き起こし、視覚情報と力覚情報の一致性を保った上で運動予測と運動結果との間に差を生じさせる実験を行った結果、運動伝染と同じ方向に外力を感じることが確認されました。この結果より、運動予測と運動結果との差の認知が Pseudo-haptics の発生に重要な要因になることが示されました。

ステアリングタスクを実施している様子
