デジタルイラストの描画過程を動画で記録する「イラストタイムラプス動画」と「イラストメイキング動画」は、学習・鑑賞用途で広く視聴されています。しかし多くの動画は描画プロセスを短縮したものがそのまま記録されているため、イラスト中の特定の部位に着目して過程を見ようとすると手間がかかります。
そこで本研究では、注目したい領域の時系列の変化を領域ごとのタイムラインで並列表示し、クリックすることで描画の様子を確認できる学習者向けの分析ツールを提案しました。そして、その分析で得たデータを活用して、よりインタラクティブなタイムラプスを楽しめる手法も合わせて提案しました。
イラスト学習者向け分析ツール

このツールは、イラストの描画過程を効率的に分析するために開発されました。画面の上部にはタイムラプス動画、中央部には注目している部分の拡大画像、右側には差分画像を表示し、下部には各部位ごとの特徴量の時系列変化をカラーマップで可視化したタイムラインを並列表示しています。
ユーザーは事前に完成画像から注目したい領域をマスク画像として指定し、各領域のフレーム間差分を特徴量として抽出します。タイムライン上の青色部分は変化の少ない時間帯、緑色、黄色、赤色になるにつれ活発に描画が行われていることを示しており、クリック操作でその時刻の描画過程を確認できます。これにより、キャラクターの顔や目など特定の部位に着目した効率的な学習が可能となります。
よりインタラクティブなタイムラプス生成
イラスト中の各領域は一般に変化のない時間が大半を占めるため、元のタイムラプスの時間軸に沿って再生していると、注目している個々の領域は見た目の変化が少ないという問題があります。
そこで、各領域ごとに独立した、変化のないフレームを省いたタイムラプスを生成します。さらに、変化の多いところはサンプリング間隔を狭く、少ないところは間隔を広くとることで、画面の変化量を一定にしたタイムラプスを作成しています。
このように生成した領域別のタイムラプスを元の絵に再合成し、鑑賞者の視線やタッチ操作に反応してタイムラプスを巻き戻すインタラクティブ展示を実現しました。これにより関心のある部位に絞って描画過程を鑑賞することが可能となり、鑑賞者のイラスト制作過程への関心を喚起することが期待できます。
謝辞
本稿で例として用いたタイムラプス動画は著作者の了解のもとに下記のものを使用しました。
Zofia Duffy: teahouse ✦ timelapse【CLIP STUDIO PAINT】 https://youtu.be/uzM64vRR2dg
動画の使用をご快諾下さったZofia Duffyさんに感謝いたします。
