ディスプレイやスクリーンを使う立体映像提示装置のうち、眼鏡式のものでは左眼用と右眼用のそれぞれの映像を同一の面に重ねて表示するため、専用眼鏡を外して映像を観ると両者の映像が混ざる「クロストーク」の発生により、映像の視認性が損なわれます。
通常の手法における右眼用画像と左眼用画像を並べたもの。(交差法での立体視が可能) 両者を重ねて表示した状態

本研究では、このクロストークを軽減しつつ立体感を保持する映像提示手法「HybriD」を開発しました。本手法は人間の視覚特性を応用したもので、片方の映像の空間周波数を低下させても両眼視した際に立体感を感じられるのと同時に、空間周波数の偏り方が異なる画像を重畳表示した場合に高周波成分を含んだ画像を優先的に認知しやすいという特性を利用しています。
HybriDでは、左右の映像に対して異なる空間周波数フィルタリングを適用します。一方の映像(通常は右眼用)には高周波成分を保持し、もう一方の映像(左眼用)には低周波成分のみを残すことで、眼鏡を外した状態でも視認性をあまり損ねることなく、眼鏡着用時の立体感を維持します。
提案手法を適用した画像。ここでは右眼用画像(左図)の空間周波数を低下させている。(交差法での立体視が可能) 両者を重ねて表示した状態。解像感は低下するが、従来手法に見られたダブりは解消されている。

本技術は、デジタルサイネージ、映画館、ゲーム機器など、様々な立体映像表示システムに応用可能です。特に、眼鏡の着脱が頻繁に行われる環境や、複数の視聴者が同時に利用する環境での活用が期待されます。
