動画共有サービス 「ニコニコ動画」 では、疑似同期型のユーザ間コミュニケーション形態が確認されています。これは非同期でありながら同期しているように感じられるコミュニケーションであり、動画視聴時の感情共有やライブ感をユーザに与えています。本研究ではこの疑似同期型コミュニケーションをゲームへと応用し、ゲームプレイヤー間の疑似同期型コミュニケーションシステムの提案および効果の検証を行いました。
提案手法ではニコニコ動画のインタフェースを模倣し、ゲームの進行を管理するフラグを用いて進行状況に沿ったコメント表示を実現しました。結果、ゲームにおいても疑似同期の感覚が得られ、面白さに影響を与えられることが分かりました。また、被験者は他のプレイヤーのプレイングを感じることがあるとも報告しており、疑似同期とは異なるコミュニケーション形態の可能性も示されました。

提案手法におけるゲーム内フラグを基にしたコメント表示機能の説明
また、動画共有サービス 「ニコニコ動画」 において実現されている疑似同期型コミュニケーションをゲームへと応用したゲーム投稿コミュニティサイト 「RPG アツマール」 上でのプレイヤー間コミュニケーション形態についても調査を行いました。同サイトに投稿されているゲームの中から、アドベンチャー、RPG、アクション、シミュレーション、パズル ・ ボードゲーム、その他の 6 つのゲームカテゴリにおいて投稿コメントを集計し、リアクション、意見、疑問、状況報告、クレーム、アンサー、ネタバレ、ヒントの 8 項目に分類して分析しました。
その結果、全てのカテゴリにおいてシーンに対する即時的な反応を示す 「リアクション」 が最も多くみられ、共感やライブ感が引き起こされている可能性が高いことが分かりました。さらに、ニコニコ動画に実況プレイ動画としてアップロードされている作品のコメントを集計し、実況プレイ動画と RPG アツマールの作品におけるコメントの違いについて調査しました。その調査より、RPG アツマールの作品では実況プレイ動画に比べてシステムの不具合や内容に対する文句を表す 「クレーム」、選択肢において自身の選択した内容や進行状況を報告する 「状況報告」 といったコメント群が多く、ゲーム特有のコミュニケーションが生じていることがわかりました。
