ゲームにおけるパラメータの提示手法と満足感への影響

ロールプレイングゲーム(RPG)の戦闘シーンでは、キャラクターのHPや攻撃力、与えるダメージなどの数値がプレイヤーに提示されます。こうした数値はプレイヤーキャラクターの成長に伴って大きくなり、それがプレイヤーにとって成長や達成感を実感させる重要なメカニクスとなっています。

本研究では、こうした数値の上昇が実際のプレイ感覚にどのような影響を及ぼしているかを調査するため、 RPG の典型的な戦闘場面を模した実験用プログラムを被験者に遊んでもらう実験を行いました。ゲーム中に登場する各種パラメタが標準設定の条件、すべて15倍で表示される条件、すべて225倍(=15×15)で表示される条件の、 3条件を比較しました。いずれの条件でも、プレイヤーキャラクターの強さと敵キャラクターの強さの相対的な比率はすべて同じにしてあるため、難易度はどの条件でも変わりありません。

実験の結果、数値が大きくなると、ゲームを「難しい」と感じやすくなる傾向が見られました。一方で、数値が大きくなると、プレイヤーの主観的な難度は高くなり、実際には同じ難易度であるにも関わらずゲームを「難しい」と感じる傾向が見られました。

例えば敵キャラクターに与えるダメージを過剰に見積もって攻撃を欲張ったり、逆に敵キャラクターから受けるダメージを過剰に見積って回復を急ぎ過ぎて使い果たしてしまう、といったプレイ傾向が観察され、これらが「難しい」と感じる原因となっていました。

なお、数値が大きくなることで「面白さ」が増すという傾向は明確には得られませんでした。

これらの結果より、ゲームにおけるパラメタの大きさが、実際の難易度には変化がなくとも、プレイヤーの心理やプレイに影響を与えうることが示唆されました。

発表文献

  1. 研究報告: “ロールプレイングゲームにおける戦闘パラメータの提示手法がプレイヤーの満足感に与える影響の研究” 和田 拓哉, 福地 健太郎, 情報処理学会研究報告 Vol. 2017-HCI-173. LINK (2017)

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