認知されにくい操作アシスト

コンピュータゲームにおいては、プレイヤーの力量や経験に応じて適切な体験を提供することが重要です。特に、初心者や操作が苦手なプレイヤーにとっては、思い通りに操作できないことがストレスや離脱の原因となるため、ゲーム進行上のペナルティを減らし、ストレスを軽減する工夫が求められます。その一つの手法として、プレイヤーの操作を補正(アシスト)する技術が注目されています。しかし、アシストの存在がプレイヤーに認知されると、その効果が薄れてしまうことが指摘されています。そこで本研究では、認知されにくい操作アシストの実現を目指し、プレイヤーに気付かれにくい形で体験を向上させる手法の開発と評価を行っています。

提案手法

本研究では、ゲームコントローラのアナログスティック操作に対し、入力方向が変化した時のみ、落下を防ぐ方向にキャラクタの進行方向を補正するアシスト手法を提案しました。スティック入力の変化時のみ補正を行う理由は、入力方向が一定の際に補正を加えると、プレイヤーが何もしていないのにキャラクタの進行方向が変化し、アシストの存在が認知されやすくなるためです。この手法を、狭い橋を渡るゲームに実装し、橋の中央へと引き戻す補正をスティック入力の変化量に応じて付与しました。スティックの入力変化量が大きいほど補正が強く作用し、逆に変化していない時には一切アシストが発生しないようになっています。

操作アシストの仕組みに関する模式図

被験者実験の結果、提案手法は落下回数の軽減や主観的難易度の低減に有効であり、多くの被験者はアシストの存在に気付かず、その有無を正しく当てられませんでした。この結果より、提案するアシスト手法はゲームの成績を改善できたうえで、プレイヤーには認知されにくいことが示されました。

受賞

  • Entertainment Computing 2025 一般セッション優秀賞

発表文献

  1. 研究報告: “スティック入力による狭隘路通過課題に対する認知されにくい操作支援の研究” 油井 太一郎,福地 健太郎, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2025論文集, pp. 226-233. LINK (2025) — 🏆一般セッション優秀賞

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